どのような内容にするか

ここまで学んできたことをもとに、実際に遺言書を作成してみましょう。

まず、どのような内容を遺言書に記載するか。

そもそも、あなたは、なぜ遺言書を作成しようと思っているのでしょうか?基本的には、自分の死後、残された者たちに自分の意思を伝え、争うことなく遺産を分けてもらいたいと思っているのではないでしょうか。遺言書を作成する目的がはっきりすれば、書くべき内容を自然と決まってくると思います。

それでは、どの財産を誰に分けるか、その分け方が争いのもとにならないか、最低限、下記のポイントはチェックしておきましょう。

自分にどのような財産があるか

財産としては、現金、預貯金のほか、貴金属などの動産類、不動産、株式などが考えられます。

それぞれ財産を相続人に分ける際には、疑義のないよう十分に特定した形で遺言書に記載する必要があります。

例) 預貯金の場合、「○○銀行○○支店 口座番号123456」

   不動産の場合、「所在:奈良県生駒市元町 地番:××番地1 地目:宅地 地積:100.00u」

   株式の場合、「○○株式会社発行の株式 1,000株」

また、相続財産には債務も含まれますが、遺言によって一部の相続人にのみ債務を相続させることはできません。

遺留分を侵害しないか

兄弟姉妹を除く相続人には、遺留分が存在します。

遺留分を侵害する遺産分割の方法を遺言書に定めてしまうと、後日、遺留分減殺請求という手続きを取られる場合があり、争いのもとになりますので注意が必要です。

遺留分を侵害しないか、検討するためには相続財産の計算が必要となります。生前に相続人に財産を贈与した場合には、特別受益の持ち戻し制度が、相続人が生前に稼業の経営に協力した等の事情がある場合には、寄与分の制度がありますので、相続財産の計算には注意が必要です。

遺言をすることができるか

遺言をするには、遺言能力が必要です。民法上は、15歳以上であれば、遺言能力があるとされています。

ただし、成年被後見人の場合は、医師2名以上が立ち会い、本人が遺言できる程度の判断能力を一時的に回復したことを証明する必要があります。

実務上、問題となるのは、高齢者の方が単独で遺言書を作成した場合に、加齢により判断能力が欠けていたとして遺言能力につき争いが生じるケースです。

遺言能力の有無については、最終的には裁判所が判断することになりますが、争いがおきないように、公証人立会いの下、公正証書により遺言を作成する方が良いでしょう。また、遺言書作成時に遺言能力があることを証明するため、医師の診断書を用意しておくと良いかもしれません。

どの方式の遺言書を作成するか

主に、自筆証書遺言公正証書遺言のどちらかを選択することになります。

簡便さを重視するなら自筆証書遺言、確実性を重視するなら公正証書遺言ということになります。

自筆証書遺言を選択した場合

自筆証書遺言を選択した場合、上記の点に留意して、自筆で遺言の内容を記載します。ワープロや代筆、ビデオ撮影などの遺言は無効ですので、注意して下さい。

書面には、日付を記載する必要があります。なお、「平成○○年×月吉日」との記載は、日付の特定ができないため無効です。

最後に、署名・押印が必要です。これは、実印でなくとも構いません。差し替えのおそれがないように、綴じ目に押印しておくと良いでしょう。

公正証書遺言を選択した場合

公正証書遺言を選択した場合、遺言の内容を決めた後、公証役場に確認して必要書類を準備しましょう。印鑑登録証明書、戸籍謄本、住民票、登記事項証明書などが必要となります。

また、遺言書の作成に立ち会う証人2人を用意しましょう。ただし、適当な人がいない場合には、証人を用意してくれることもあるので、公証役場に問い合わせて下さい。

事前に公証人と遺言の内容について打ち合わせた後、公証役場において公正証書遺言を作成します。内容が複雑な場合、事前の打合せは複数回に及びますが、弁護士などに依頼すると代わりに打合せを行ってくれます。

公証役場では、事前の打合せに基づき、遺言の内容を公証人が書面にしているので、これを確認して書面を完成させた後、公証人がこれを読み上げ、遺言者及び立会人らが公正証書遺言の原本に署名・押印します。

公正証書遺言は、原本、正本及び謄本が作成されます。このうち原本は公証人により保管され、遺言者には正本と謄本が交付されます。

遺言の内容を変更したいときには

遺言書を作成した後に、その内容を変更したい場合も出てくるかもしれません。そのような場合、いつでも何度でも、遺言書の内容は変更できます。

自筆証書遺言や秘密証書遺言では、遺言書を破棄すれば遺言の内容は撤回されます。これに対し、公正証書遺言では、自分の保管する遺言書の正本や謄本を破棄しても、公証役場が原本を保管しているので撤回できません。この場合は、新たな遺言書を作成する必要があります。

「前の遺言の内容を撤回する」と記載した遺言書を作成すれば、前の遺言書は取り消されます。

また、前の遺言の内容と矛盾する内容の遺言書を作成すれば、矛盾する範囲で前の遺言を取り消したことになります。

遺言者が、遺言の内容と矛盾する行為をした場合(例えば、土地建物を長男に相続させるという内容の遺言を作成した後、その土地建物を第三者に売却した場合)にも、前の遺言は取り消されたことになります。

もっとも、このような行為は遺言者の死後にトラブルの原因ともなりますから、前の遺言書は破棄し、新たな遺言書を作成しておく方が良いでしょう。

誰がどのように遺言を実現するか

自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合、遺言者の死亡後、遺言書を発見した者または遺言書を保管する者は、速やかに家庭裁判所に検認手続きの申立てをしなければなりません。(公正証書遺言の場合。検認手続きは不要です。)

なお、検認手続きは、遺言書の存在及び内容を相続人に知らせるためのものであり、遺言書の有効・無効を確定させるものではありません。

その後、遺言執行者、または相続人全員が遺言の実現をしていくことになります。

相続人の中に非協力的な者がいる場合や行方不明者がいる場合、遺言の実現は非常困難となります。また、相続人の一部が遠方にいる場合にも、手続きが煩雑となり時間がかかるおそれがありますので、出来れば弁護士など信頼できる第三者を遺言執行者に指定しておく方が良いでしょう。

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