遺言等をしなかった場合

経営者が遺言等をせずに死亡した場合、相続人全員で遺産の分割をしないといけませんが、相続人間で遺産分割協議が整わない場合には、家庭裁判所に調停などを申し立てる必要があり、遺産分割が完了するまでに時間が掛かってしまいます。その他、以下のような弊害も生じる可能性があります。

 

後継者へ資産を集中することができない

経営者が遺言等をしないで死亡し、相続人間で遺産分割協議が整わない場合には、調停を申し立てる等して家庭裁判所の関与の下、遺産分割をすることになります。

その場合、原則として法定相続分に従って遺産が分割されるので、株式などの事業用資産が後継者に十分に引き継がれないことがあります。

これを防ぐためには、遺言生前贈与などで後継者に事業用資産が引き継がれるようにしておくことが必要です。

金銭債権等が各相続人に分割される

経営者が遺言等をせずに死亡して相続が開始した場合、金銭債権等の分割債権は、共同相続人間で法定相続分に従って当然に分割されます。

その結果、後継者と敵対関係にある相続人が、会社に対して貸付金の返還を請求すると、会社はその支払いに応じなければならず、会社の資産が流出してしまいます。

また、亡経営者個人の預貯金についても、共同相続人に当然分割されるというのが判例です。したがって、各相続人は自己の法定相続分に応じて普通預貯金の払い戻しを請求できることになりますので、経営者個人の預貯金が会社の重要な資金繰りになっている中小企業のようなケースでは、会社が資金繰りに窮する事態が発生するおそれがあります。

(なお、実務上、銀行や郵便局では、原則として普通預貯金の分割払い戻しは認めず、相続人全員の署名等を求める取り扱いのようです。)

会社の株式が相続人の共有となる

遺言等をせずに死亡した場合、経営者が所有する会社の株式については、遺産分割が終了するまで共同相続人の共有になるとするのが判例です。

この場合、自社株の権利行使は、各相続人の共有持ち分の過半数で定めることになります。仮に後継者が過半数の自社株を保有していないと、その他の相続人が結託して会社経営を妨害されるおそれがあります。

また、遺産分割協議が紛糾すれば、株式共有の状態が何年も続くことになります。

このようなおそれがある場合には、遺言死因贈与などで後継者に株式を承継させておくべきです。

遺言等をする際に配慮すべきこと

@遺留分を侵害しないこと

遺言や生前贈与をする場合には、なるべく他の相続人の遺留分を侵害しないようにすべきです。

また、遺留分の放棄は、被相続人の生前でも家庭裁判所の許可を得れば可能です。遺留分を放棄すれば、当該相続人は、相続人の地位は失わずに遺留分減殺請求をすることができなくなります。

A遺言では、全ての分割方法を指定しておくこと

遺産分割協議において問題となるのが、「特別受益」「寄与分」です。

この点、遺言で全ての分割方法を指定しておくと、特別受益の持ち戻しの問題は生じませんし、寄与分の主張も封じることができます。(ただし、特別受益が遺留分を侵害していれば、遺留分減殺請求の対象となるので、注意が必要です。)

特に事業承継においては、遺言者である経営者が、後々、遺産分割協議の場面が生じないように、全ての遺産の分割方法を指定しておくべきです。

例)「以上に定める財産のほか、一切の財産を妻●●に相続させる」

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